『COOL』は、世界で活躍するアーティストやニューヨークで注目のアートシーンなどを紹介していくアートマガジンです。創造するということ、かっこいいものを見ること、そこから感じる何かを世界中で共感できたらおもしろい!文化が違うとこんな違ったかっこよさもあるんだ!そんな発見・感動をしてもらえるボーダレスなアートマガジンを目指しています。現在、全米各地やカナダ、フランス、日本、中国などで発売中。誌面ではなかなか伝えられないタイムリーな情報や、バックナンバーに掲載されたインタビューなどをこのブログで公開していきます。
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チェルシー“Transplant Gallery”で行われた展覧会『Takagi Masakatsu + Saeko Takagi—Color of Empty Sky—』(4/29-5/26)では、高木正勝と高木紗恵子の共同プロジェクトとして、最新作の『Color of Empty Sky』の初上映と同時に、“ATM Gallery”ではドローイングの展示『Zert』が行われた。実写映像を使った映像作品が多い中で、素材から全てを作り上げたアニメーション作品『Color of Empty Sky』は、両作家の新境地を切り開く作品として注目を浴び、オープニングには多くの人が詰め掛けた。今回、高木さんはその多忙なスケジュールの合間を縫ってCOOLのインタビューに応じてくれた。
COOL:高木さんの簡単なプロフィールを教えてください。
Masakatsu Takagi:79年生まれ、京都出身です。外国語大学の英語科にいましたが、1年で中退して、その時に知り合った仲間たちとフリーペーパーのような雑誌を作っていまし た。その雑誌にカセットテープで音楽を付けていたりしていたんですが、その雑誌が FMラジオ局の賞を取ってしまったんです。その頃写真をやっていたこともあって、メ ンバーの作る音楽に映像を付けてみようということになって。それで写真の延長と いう感じでビデオを始めたんですが、そのうちにそれがすごく面白くなってしまったんです。1年ほど続けていたら12本程の映像が出来たんですが、それをたまたま東京の人が見 てくれて、映像のDVDをカタログ感覚でリリースすることになりました。その頃からクラブ でライブをするようになったのですが、その反響はすごかったですね。それからどんどんプロ意識が上がっていきました。もともとクラブやテクノにはあまり興味がなかったので、それからは自分の作品として音楽と映像を作り始めました。最初、音楽は映像のためのおまけだったんですが、音楽がいいと言ってくれる人も結構いて、それで今は両方が成り立っているという感じです。
C:今回、高木さんはトランスプラント・ギャラリーで、奥さんの紗恵子さんはATM ギャラリーで、それぞれ同時に展示を行ったわけですが、その経緯について聞かせて下さい。
MT:まず、ATMギャラリーの個展が先に決まりました。トランスプラントでは、以前から 僕のDVDを置いてもらっていてやり取りがあったので、この機会に同時にやってみよ うということになりました。また、UAのために制作したプロモーションビデオを、ひとつの作品として、美術館やギャラリーなどで見せたかったということもあります。
C:UAコラボレーションすることになったきっかけは何だったのですか?
MT:(彼女が)僕の作品である『world is so beautiful』のDVDを見てくれて、それでオファーがきました。最初の作品である『Lightning』を作っている途中で、彼女に見せたのですが、思っていたのと違うと言われて(笑)。『world is so beautiful』みたいになると思っていたと言われたんです。結局、完成した時には納得してもらえましたけどね。最初の作品『Lightning』はUAから依頼を受けて作ったんですが、2作目の『Color of Empty Sky』はこちらから話を持ちかけて、あくまでも作品として作ったんです。ですから彼女の音楽だけを借りたという感じですね。『Lightning』ではUAの考えを確認しながら作り上げていったんですけど、『Color of Empty Sky』のほうでは、完全に僕たちの考えていることを形にしました。
C:では『Lightning』を作る過程では、UAとの話し合いはなかったのですか?
MT:最初の 『Lightning』は、プロモーションビデオだったので、もちろん打ち合わ せをしました。でも、彼女は、影がまったくない光の中に自分がいるというイメージ で曲を作ったみたいなんですけど、それが僕の中の曲のイメージと違ったんですよ。 それに僕は『Lightning』を“閃光”という意味で捉えていたんです。でもそれが実 は“雷”だったということが後で分かって(笑)。それからはよく話し合いましたね。
C:高木さんの作品は、実写映像とパソコンで仕上げるものが多いと思うのですが、今回の作品は今までとはちょっと違いますよね?
MT: 以前は、自分で撮影してきた映像をベースに作品にしてきました。UAのビデオを 作ってからは、同じやり方でも形を変えて何点か作ったりしましたね。この作品を 作ってから作風が変わってきました。
C:『world is so beautiful』は、もともとアニエス・べーのために作ったそうです が、きっかけは何だったのですか?
MT:これも、アニエス・ベーの会社の人が僕の作品をたまたま見てくれたんです。ちょうど日本のアニエス・ベーが、何かアートに関わることをしたいということで、それでフランスの本社から許可が出たんです。ですから何の前例もなかったので、すごく自由にできましたね。実際に関わる以前に、アニエス・ベーのショップの雰囲気がすごく好きだったので、あそこに僕の映像があったらと思っていたんです。
C:『world is so beautiful』の中の『Birdland』という作品について少し教えてください。
MT:アイディア自体は、いつも作り始めてから途中で思いつくんです。まず最初に、 撮ってきた映像に色をつけたり、技術的な面でできることを試したりして。シリーズ ものの場合は、全体として伝えたいテーマみたいなものが、いつも簡単な漢字で思い浮かぶんです。例えば「成長」「発芽」「飛躍」だったり。いつも何か爆発するようなエネルギーに関連したものですね。 僕の映像のプロセスで言うと、最初の1分間だけでも、いつも種としてラフな部 分を残すんですよ。それがちょっとずつ、どう成長して行くかを見るのが好きで すね。自分でも想像しなかったものにたどり着きたいという気持ちが常にあります。 最初から最後までひとつのコンセプトでガチッと決まったものを作りたい訳ではない んですね。一枚の絵を5分間の映像でやっているような感覚なんです。最終的には見え なくなる下書きの部分もしっかり入れたいですね。後のほうがクオリティーが高いと いうよりは、全体を見た時に一枚の絵を見た時と同じ印象を受けられるものを作りた いのです。だから『Birdland』の場合も、人の動きと鳥の映像を見ていて、こう作ろうか なって思うぐらいです。あと作品のためにわざわざ撮影にいったりはしないですね。最初から決めて作らないので、ろくでもないものが出来たりするときもありますよ(笑)。
C:どこから作品のインスピレーションを受けますか?
MT:旅行ですね。年に3、4回は旅に出ます。つい最近ではネパールに行きました。 旅に出ると大体2つくらいのアイディアがまず頭の中に浮かびますね。特にメモやス ケッチをとったり、撮影をする訳ではないんですが、ずっと気になっているものは、 それから最低半年または、1年以上してから作品として外に出てきたりします。だから何 か撮影する時は、無意識のうちに前に受けたインスピレーションに促されてしている んだと思います。インスピレーションは、まず1回発酵させて、自分でもトランス状態にならないとだめですね。自分だけど自分じゃないみたいな複雑な感覚じゃないと、自分の作品と思えないんですよ。
C:電子音楽やビデオアート、他のアーティストのライブのツアーに参加したりと 様々なことをされていますが、どの部分にプライオリティーをおいているのですか?
MT:特に優先とかはしていなくて、その時にやりたいことをしています。大体交互にその波がやってきます。どっちかに集中したら、もう片方はうっとうしくなってしまうんです(笑)。
C:8枚目のDVD『Coieda』について教えてください。
MT:これは1年以上前に作った作品です。今までに出ているDVDの中では一番新しい作品です ね。それまでの作品は、コンピュータで作った音、生楽器の音、歌などが入っていてポッ プミュージック風だったりというように、別れてしまっていいて、それぞれに関連性が なかったんです。その時の気分によって全く違うものが出来るので。『Coieda』は、 今まで分けていたものを全部一緒にして、地に足がついた作品になっていると思います。DVDとしては、今まで4年間やってきたことの集大成のような作品ですね。映像に関して は、『world is so beautiful』が自分の思っていたことをすべて吐き出してしまっ たような作品だったので、最近はまた自分でも新しいと思えるような映像が作れるようになってきました。『Coieda』はそのちょうどその途中経過みたいなものですね。
C:今後はどんなことをする予定ですか?
MT:今回ニューヨークの美術館で、素晴らしいアーティストたちの作品を久しぶりに見て思ったんですが、今までは狭い枠の中しか見えてなくて、そこで一番になったらいいって思ってたんです。まだ若いからこんなもんでいいだろって。でもこれからは40、50歳のすごい人たちとも対等な所でやっていかないといけないなと、初めて強烈に思いましたね。
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高木正勝
ミュージシャン/映像作家
全国のアップルストアや、金沢21世紀美術館、東京都現代美術館、アニエスbショップなどでの作品上映のほか、細野晴臣と高橋幸宏のユニット『Sketch Show』やデビット・シルビアンの全米・ヨーロッパライブツアーにも参加、ドイツやニューヨークのレーベルからはアルバムもリリースし、UAやYukiといった有名アーティストのプロモーションビデオの制作も手がける。
COOL:高木さんの簡単なプロフィールを教えてください。
Masakatsu Takagi:79年生まれ、京都出身です。外国語大学の英語科にいましたが、1年で中退して、その時に知り合った仲間たちとフリーペーパーのような雑誌を作っていまし た。その雑誌にカセットテープで音楽を付けていたりしていたんですが、その雑誌が FMラジオ局の賞を取ってしまったんです。その頃写真をやっていたこともあって、メ ンバーの作る音楽に映像を付けてみようということになって。それで写真の延長と いう感じでビデオを始めたんですが、そのうちにそれがすごく面白くなってしまったんです。1年ほど続けていたら12本程の映像が出来たんですが、それをたまたま東京の人が見 てくれて、映像のDVDをカタログ感覚でリリースすることになりました。その頃からクラブ でライブをするようになったのですが、その反響はすごかったですね。それからどんどんプロ意識が上がっていきました。もともとクラブやテクノにはあまり興味がなかったので、それからは自分の作品として音楽と映像を作り始めました。最初、音楽は映像のためのおまけだったんですが、音楽がいいと言ってくれる人も結構いて、それで今は両方が成り立っているという感じです。
C:今回、高木さんはトランスプラント・ギャラリーで、奥さんの紗恵子さんはATM ギャラリーで、それぞれ同時に展示を行ったわけですが、その経緯について聞かせて下さい。
MT:まず、ATMギャラリーの個展が先に決まりました。トランスプラントでは、以前から 僕のDVDを置いてもらっていてやり取りがあったので、この機会に同時にやってみよ うということになりました。また、UAのために制作したプロモーションビデオを、ひとつの作品として、美術館やギャラリーなどで見せたかったということもあります。
C:UAコラボレーションすることになったきっかけは何だったのですか?
MT:(彼女が)僕の作品である『world is so beautiful』のDVDを見てくれて、それでオファーがきました。最初の作品である『Lightning』を作っている途中で、彼女に見せたのですが、思っていたのと違うと言われて(笑)。『world is so beautiful』みたいになると思っていたと言われたんです。結局、完成した時には納得してもらえましたけどね。最初の作品『Lightning』はUAから依頼を受けて作ったんですが、2作目の『Color of Empty Sky』はこちらから話を持ちかけて、あくまでも作品として作ったんです。ですから彼女の音楽だけを借りたという感じですね。『Lightning』ではUAの考えを確認しながら作り上げていったんですけど、『Color of Empty Sky』のほうでは、完全に僕たちの考えていることを形にしました。
C:では『Lightning』を作る過程では、UAとの話し合いはなかったのですか?
MT:最初の 『Lightning』は、プロモーションビデオだったので、もちろん打ち合わ せをしました。でも、彼女は、影がまったくない光の中に自分がいるというイメージ で曲を作ったみたいなんですけど、それが僕の中の曲のイメージと違ったんですよ。 それに僕は『Lightning』を“閃光”という意味で捉えていたんです。でもそれが実 は“雷”だったということが後で分かって(笑)。それからはよく話し合いましたね。
C:高木さんの作品は、実写映像とパソコンで仕上げるものが多いと思うのですが、今回の作品は今までとはちょっと違いますよね?
MT: 以前は、自分で撮影してきた映像をベースに作品にしてきました。UAのビデオを 作ってからは、同じやり方でも形を変えて何点か作ったりしましたね。この作品を 作ってから作風が変わってきました。
C:『world is so beautiful』は、もともとアニエス・べーのために作ったそうです が、きっかけは何だったのですか?
MT:これも、アニエス・ベーの会社の人が僕の作品をたまたま見てくれたんです。ちょうど日本のアニエス・ベーが、何かアートに関わることをしたいということで、それでフランスの本社から許可が出たんです。ですから何の前例もなかったので、すごく自由にできましたね。実際に関わる以前に、アニエス・ベーのショップの雰囲気がすごく好きだったので、あそこに僕の映像があったらと思っていたんです。
C:『world is so beautiful』の中の『Birdland』という作品について少し教えてください。
MT:アイディア自体は、いつも作り始めてから途中で思いつくんです。まず最初に、 撮ってきた映像に色をつけたり、技術的な面でできることを試したりして。シリーズ ものの場合は、全体として伝えたいテーマみたいなものが、いつも簡単な漢字で思い浮かぶんです。例えば「成長」「発芽」「飛躍」だったり。いつも何か爆発するようなエネルギーに関連したものですね。 僕の映像のプロセスで言うと、最初の1分間だけでも、いつも種としてラフな部 分を残すんですよ。それがちょっとずつ、どう成長して行くかを見るのが好きで すね。自分でも想像しなかったものにたどり着きたいという気持ちが常にあります。 最初から最後までひとつのコンセプトでガチッと決まったものを作りたい訳ではない んですね。一枚の絵を5分間の映像でやっているような感覚なんです。最終的には見え なくなる下書きの部分もしっかり入れたいですね。後のほうがクオリティーが高いと いうよりは、全体を見た時に一枚の絵を見た時と同じ印象を受けられるものを作りた いのです。だから『Birdland』の場合も、人の動きと鳥の映像を見ていて、こう作ろうか なって思うぐらいです。あと作品のためにわざわざ撮影にいったりはしないですね。最初から決めて作らないので、ろくでもないものが出来たりするときもありますよ(笑)。
C:どこから作品のインスピレーションを受けますか?
MT:旅行ですね。年に3、4回は旅に出ます。つい最近ではネパールに行きました。 旅に出ると大体2つくらいのアイディアがまず頭の中に浮かびますね。特にメモやス ケッチをとったり、撮影をする訳ではないんですが、ずっと気になっているものは、 それから最低半年または、1年以上してから作品として外に出てきたりします。だから何 か撮影する時は、無意識のうちに前に受けたインスピレーションに促されてしている んだと思います。インスピレーションは、まず1回発酵させて、自分でもトランス状態にならないとだめですね。自分だけど自分じゃないみたいな複雑な感覚じゃないと、自分の作品と思えないんですよ。
C:電子音楽やビデオアート、他のアーティストのライブのツアーに参加したりと 様々なことをされていますが、どの部分にプライオリティーをおいているのですか?
MT:特に優先とかはしていなくて、その時にやりたいことをしています。大体交互にその波がやってきます。どっちかに集中したら、もう片方はうっとうしくなってしまうんです(笑)。
C:8枚目のDVD『Coieda』について教えてください。
MT:これは1年以上前に作った作品です。今までに出ているDVDの中では一番新しい作品です ね。それまでの作品は、コンピュータで作った音、生楽器の音、歌などが入っていてポッ プミュージック風だったりというように、別れてしまっていいて、それぞれに関連性が なかったんです。その時の気分によって全く違うものが出来るので。『Coieda』は、 今まで分けていたものを全部一緒にして、地に足がついた作品になっていると思います。DVDとしては、今まで4年間やってきたことの集大成のような作品ですね。映像に関して は、『world is so beautiful』が自分の思っていたことをすべて吐き出してしまっ たような作品だったので、最近はまた自分でも新しいと思えるような映像が作れるようになってきました。『Coieda』はそのちょうどその途中経過みたいなものですね。
C:今後はどんなことをする予定ですか?
MT:今回ニューヨークの美術館で、素晴らしいアーティストたちの作品を久しぶりに見て思ったんですが、今までは狭い枠の中しか見えてなくて、そこで一番になったらいいって思ってたんです。まだ若いからこんなもんでいいだろって。でもこれからは40、50歳のすごい人たちとも対等な所でやっていかないといけないなと、初めて強烈に思いましたね。
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高木正勝
ミュージシャン/映像作家
全国のアップルストアや、金沢21世紀美術館、東京都現代美術館、アニエスbショップなどでの作品上映のほか、細野晴臣と高橋幸宏のユニット『Sketch Show』やデビット・シルビアンの全米・ヨーロッパライブツアーにも参加、ドイツやニューヨークのレーベルからはアルバムもリリースし、UAやYukiといった有名アーティストのプロモーションビデオの制作も手がける。
text by Kazumi UMEZAWA, photo by Wallace Spain
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