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『COOL』は、世界で活躍するアーティストやニューヨークで注目のアートシーンなどを紹介していくアートマガジンです。創造するということ、かっこいいものを見ること、そこから感じる何かを世界中で共感できたらおもしろい!文化が違うとこんな違ったかっこよさもあるんだ!そんな発見・感動をしてもらえるボーダレスなアートマガジンを目指しています。現在、全米各地やカナダ、フランス、日本、中国などで発売中。誌面ではなかなか伝えられないタイムリーな情報や、バックナンバーに掲載されたインタビューなどをこのブログで公開していきます。
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火薬を使ったダイナミックなインスタレーションなどで知られている、中国出身のアーティスト蔡國強(Cai Guo-Qiang)。今やアジアを代表するアーティストのひとりとして、ニューヨークを拠点に活動し、日々世界中を飛び回っている。彼がニューヨークという場所を活動の拠点として選んだ理由や、アーティストとしての活動を通じて感じた、ニューヨークと日本のアートシーンの現状とその違いについて話を聞いた。


----- ニューヨークでの活動について

COOL:なぜニューヨークを仕事の拠点として選んだのですか?

蔡國強:まず1986年に中国から日本へ渡りました。日本には8年半ほど住みました。中国で生まれて、その後も日本で活躍していたことでずっとアジアばかりでした。90年代初めヨーロッパでの仕事をはじめた頃も、ヨーロッパに行くのはいつも展覧会の時ばかりで、ヨーロッパの人々と出会うことができなかった。それにアメリカではあまり仕事の機会がありませんでした。でもせっかく現代美術をやっているのだから、チャンスがあれば活動の場を広げ、アメリカやヨーロッパに住んで仕事がしたかった。それに20世紀はアメリカの正義といわれていたので、そのような国で実際に住んで、いろいろ考えながら仕事をしてみようとも思っていました。そして1991年、アメリカ側から日本の国際交流基金のひとつ、ACC(日米芸術家交換プログラム)への参加要請があったのですが、その時は日本人ではないということで結局却下されてしまった。しかし、1994年頃から日本の現代アート作家として国際展に作品を出展するようになり、そうしているうちに外務省や大使館などの招待で海外に行くと日本の作家の一人として認められはじめるようになりました。そして1995年にアメリカから再度ACCの申し出があり、ついにアメリカに来ることができたのです。

C:あなたにとってニューヨークはどんな場所ですか?

蔡國強:ニューヨークに住むと世界の広場にいるみたいです。いろいろな国の人々がニューヨークという広場にきて交流するという感じです。ニューヨークにいると自分から出向かなくても周りが自然と集まってきます。だから仕事をする上でもとても便利になりました。

C:アメリカでは、アジアのアートはどのように評価されていると思いますか?

蔡國強:アメリカ人はヨーロッパ人のように異国趣味的にアジアの芸術を見ているとは思いません。アメリカという国が多国文化なので、外国の文化だから興味を持つということがないんです。アジア系・ラテン系・アフリカ系といろいろありますよね。アメリカは、アジアのテーマの展覧会をしても、アジアだから評価されるということにはならないんです。逆にアメリカで評価されて活躍するということは、作家の作品・活動そのものが評価されているということなんです。時々、ベルリンやパリにいるアジア出身の作家の状況を見ると、人々に愛されてはいるけれども、作家や作品に対する評価はどうなのかと疑問に思うことがあります。その点アメリカは作品に対しての評価が正直で良かったと思います。最近、村上さん(村上隆氏)がアメリカで評価されたことも、アメリカ人が日本を好きだからということではなく、彼のやっていることや作品が、アメリカ人にとって面白かったし、楽しかったからなんですね。

C:アメリカと日本では活動するにあたってどのような違いがありますか?

蔡國強:まず日本へ行ってよかったと思うのは、日本が近代化、民主化した国だったことです。さらに人々がとても親切でした。アマチュア、若い芸術家の活動として、日本は大変良い国でした。その理由のひとつとして日本の一般のギャラリーは貸し画廊というシステムがあり、作品を発表する場があるということです。福島県いわき市へ行った時は、市民の方とコラボレートとして「地平線一環太平洋」という作品を作り上げました。いわきの町の人達に愛され、町全体がひとつになったという感じでした。当時の日本の美術界は、現代化・国際化したけれども、その反面西洋化したんじゃないかという批判もありました。ちょうどその頃の日本にいたので、そういった美術界の流れ、社会の雰囲気、いろいろな批評・考えの中にいることでとても勉強になったんです。市民とコラボレートするというコンセプトで活動するならば、日本はとても活動しやすい場所です。若い人によく言うのですが、若いときにニューヨークでがんばるのは大変ですよと。むしろ日本で好きなことをやって、自分のスタイルややりたいことを見つけてからアメリカで挑戦すればよいと思います。アメリカはアートに関するシステム(美術館、ギャラリー、コレクター、オークションハウス、マスコミ)が十分に発達しているので、ある程度力がついてきてからアメリカに来ると活動しやすいと思います。

C:実際にアメリカで活動されてどのように感じていらっしゃいますか?

蔡國強:アメリカは厳しくて、激しい。しかしそれが良いところです。例えば日本で仕事をしていたとき、作品に対する文評を読むと概ね良い評価のものばかりです。でもアメリカでは、良い評価のときもありますが、反対に大批判されることだってあるのです。

C:やりにくい面はありますか?

蔡國強:たくさんありますよ。日本にいたころは、市民とコラボレートして作品を作るということができました。私自身も日本語が話せることで、作品のコンセプトを自分の言葉で伝えることができました。また、アジアの哲学は中国から発生しているので、同じアジアの民族として自分の意図するところが伝えやすかった。アメリカでは、英語で自分のコンセプト・哲学を伝えるのは難しく、またアメリカではすべてがビジネスなので、市民とコラボレートするということ自体、多くの問題を孕んでいます。例えば、ボランティアを雇った場合、何かあった場合の責任の所在などすべてが契約で成立している社会なので、アメリカでは一般市民とのコラボレーションはなかなか実現しないのです。


----- 自身の作品について

C:最近の仕事について教えてください。

蔡國強:今年のはじめには、アメリカ・ニューメキシコ州のサンタフェにて「INOPPORTUNE」展がありました。3月にはイタリア・トスカニーで「Official Ceremony for The Permanent Installation of UMoCA」、5月は中国で「Long March: Chinese Contemporary Art Education Panel」、4月25日から10月29日までは、ニューヨークのメトロポリタン美術館で「Cai Guo-Qiang on the Roof:Transparent Monument」があります。そして6月には、今までで最大のマンマンショーがカナダのナショナル・ギャラリーで行われる予定です。

C:忙しそうですね!

蔡國強:展覧会ごとに新しい作品を製作するので大変でしたね。ロングアイランドの花火工場でドローイングを作り、中国の工場で火薬を調合しアメリカに送ってもらっています。

C:どういったところから作品のテーマを見つけるのですか?

蔡國強:9・11(ニューヨークの同時多発テロ)の後はテーマも作品の作り方も多岐に渡ってきました。火薬で虹をイーストリバー上に作ったり、街の彩りを表現したり、テロに対する現代社会の不安感をテーマにした昼の太陽の下で黒い虹を作ったりもしました。また車を使った作品は、自爆テロなどの作品を製作するきっかけにもなりました。

C:作品に風水を使ったものが見受けられますが、もしやこのスタジオの配置などにも風水が活かされているのでしょうか?

蔡國強:もちろんです。スタジオを選ぶときも風水が最優先です。実際、スタジオを購入した後でも仏様をどこに置くかとかね。ドアとドアの間にライオン石を入れたりもしましたよ。女性のスタッフが多く、いつも仕事ばかりで忙しいので恋人ができないと苦情が出た時は、何か良いご縁が来るようなものを考えて置いたりしました。スタジオには、日本的な庭も作りました。大体、展覧会をするにしても、その町の文化とか、人々の歴史とか、その空間のエネルギーとかいったものは全て風水なのです。地と気、気は見えないエネルギーですから、それらを大切しながら作品の構想をねったり作ったりしています。必ず毎回作品に対して「これが風水です」と直接的には言いませんが、美学とか視覚的に見えない方法で(風水を)意識しながら作品を作っています。

C:火薬を使った作品を制作する上で、花火の玉の中にマイクロチップを入れ爆発高度をコントロールする技術を開発されましたが、マイクロチップを導入する前と後ではどのように作品が変わりましたか?

蔡國強:まず以前は火薬そのものが危ないと言われていましたね。2001年頃から花火にマイクロチップを内蔵する開発をはじめましたが、それまでの花火はすべて導火線で爆発させ、導火線の長さで爆発のタイミングを計っていました。さらに導火線は手作りのものなので花火の形、爆発させる順番を確定させる作業は大変難しいものでした。マイクロチップ入りの花火の場合は爆発の高度・タイミングすでに計算されています。例えて言うなら2000人のチケットを持った観客がそれぞれのチケットの書かれている座席に間違いなく座るようなかんじです。2000発の花火も自分の決められた高度・タイミングで爆発するのです。しかしながら、マイクロチップを導入して良かった点と悪い点があります。良かった点は、空そのものキャンパスのように使えるようになったことです。悪い点は高価なことです。高額なお金を使って何十秒間のアートということになるといろいろな面からプレッシャーがかかります。高価だから主催者側もマスコミを使ってたくさんの人を集めます。何十秒間のアートを見るために何万人の人が集まるとさらにプレッシャーが増します。そういったプレッシャーというのはもともとアートには関係のないものですけどね。今は資金と観客は集まりますが、空にあったものがアートであったかどうか、これで果たして作品になったのかという危うさがまだ残っています。

C:仕事をしていて楽しいときは?

蔡國強:いつもワクワクしています。作品をつくることはセックスと同じことだといつも冗談を言っています(笑)自分の作品は、失敗したからもう一度やり直すということはできません。一回、一回が本番で、やってみなければ上手くいくか、いかないかは分かりません。しかし終わったあとは楽しいだけです。上手くいっても、いかなくても。作品ができたときの楽しさや幸せはいつもありますね。

C:あなたにとって芸術とはなんですか?

蔡國強:自分のやっていること。芸術の目をもって世の中を見ると、政治家の選挙や街の工事現場でもすべてが芸術に見えてきます。

C:もし芸術家になっていなかったらどんな仕事をしていると思いますか?

蔡國強:想像できないですね。芸術家の他は考えられないです。作品を作ることに関しては自分でも時々上手いなぁと思いますが、それ以外はあまり上手ではありませんから(笑)



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蔡國強(Cai Guo-Qiang)
1957年、中国福健省泉州市生まれ。
1986~95年まで日本にて活動。
現在、ニューヨーク在住。
風水などの東洋の思想に裏付けられた独自の理念と、火薬を使ったダイナミックなプロジェクトやインスタレーションで知られる。「ヴェネツィア・ビエンナーレ国際賞」をはじめとする数々の国際的な賞を受賞。これまでも世界各国で数々の個展やグループ展を開催し、国際的に高い評価を得ている。



text by Nobuko MARUTA
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