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『COOL』は、世界で活躍するアーティストやニューヨークで注目のアートシーンなどを紹介していくアートマガジンです。創造するということ、かっこいいものを見ること、そこから感じる何かを世界中で共感できたらおもしろい!文化が違うとこんな違ったかっこよさもあるんだ!そんな発見・感動をしてもらえるボーダレスなアートマガジンを目指しています。現在、全米各地やカナダ、フランス、日本、中国などで発売中。誌面ではなかなか伝えられないタイムリーな情報や、バックナンバーに掲載されたインタビューなどをこのブログで公開していきます。
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アート、音楽、ファッションなど、マルチな才能を発揮するデザイン界の貴公子、Karim Rashid。イッセイ・ミヤケやグッチーニなど、今まで手掛けたデザインは数知れず。その鮮烈でいてキュートな作品は、MoMAを始めとする数々の有名美術館のコレクションにもなっている。昨年にはNY初となる、インテリアから家具、食器までを彼自身がトータルコーディネートしたタイ料理・ 寿司レストラン・バー『Nooch』、そして彼 のデザイングッズを扱う『The Karim Rashid Shop』が立て続けにオープン。さらに今年の始めには『I want to Change the World』と題して、ヨー ロッパ初の美術館展をミュンヘンで行うなど、常に話題にこと欠かない精力的な活動ぶり。今回はそんな勢いの衰えない男の正体に迫ってみた。

COOL:ではまず最初にあなたの簡単なプロフィールを教えてください。

Karim Rashid:出身はカイロで、イギリス人の母親とエジプト人の父親の間に生まれて、ロンド ンとトロントで育った。カナダで大学を卒業し、イタリアで修士号をとったんだ。も う20年も前の話だね。その後カナダで8〜9年働き、11年前にニューヨークで自分のデ ザインオフィスを持つことになったんだ。

C:なぜデザイナーになろうと思ったのですか?なにか決めてみたいなものがあっ たのですか?

KR:あまり深く考えた事はないよ。ただ生まれつきその性質を持っていたというか… もちろん真面目な話だよ。幼い時から、物、人の顔、アパートメントやアクセサリーなどの絵を描いて育ったんだ。常に自分はいつかデザイナーになると思っていたね。 16か17の時、どの大学に行こうか考えていた時も、何を学びたいのかはっきりしていたよ。建築、ファッション、インテリア、アート、すべてを学びたいと思っていたん だ。ただその時は、工業デザインなんてものがあるなんて知らなかったんだけどね。 そのころは学校でも(工業デザインを)教えてる所はほとんどなかったんじゃないか な?僕は本当は建築科に行きたかったんだけど、たまたまそれが間に合わなくて工業 デザインを勧められたんだ。でも結局、それこそが僕のやりたい事だったというわけさ。

C:デザインに対する自分なりの哲学みたいなものがあるのですか?

KR:もちろん。素晴らしいデザイナーはみんな哲学やイデオロギー(概念)を持って いると思うよ。 デザインっていうのは、モダンで美しいものだと多くの人が思って いると思う。それって結局、非日常的なことだろう? 僕はそんな風に考えないな。 でもだからと言って、なんでもいいわけではない。ただ一般的に幅広く日常になじむ 物だと思うんだ。 それでいて生活をきっちり満たしてくれて豊かになれるもの。もちろん金銭的な問題とかじゃなくてね。

C:あなたのスタイルについて教えて下さい。

KR:そうだね、“スタイル”という言葉は、もうすでに完全に確立されて、完成して しまっている場合に使うんだよ。流動的なものには“スタイル”という言葉は使わな いんだ。それなら、僕のデザインに対する感性や哲学は何かという事になるかな。僕 はいつも、人間的で、それでいて刺激的なものを作るようにしているよ。本物の人間 性、改新的な素材などを使った科学技術的なものすべてがうまく調和した感じかな。もちろん僕の学んできたことや仕事にしていることは工業デザインなんだけど、でもアーティストとしての自分も常に感じるんだ。ちょうど、この2つの間で引き裂 かれそうになっている感覚だよ。父親が画家だったっていうのもあるけど、僕の中に はアーティストとしての詩的で感情的で繊細な遺伝子が流れているんだ。でもさ、工業デザインはこれとはまったく逆だよね。もっと生産的で技術的な商品だ。この2つ の間にラインを引くのは難しいよ。ちょうど5、6年前にNYでアートのイベントに参 加したんだ。その後も何度かそういう機会があったんだけど。すごく楽しめたし、一つのカテゴリーに収まらなくてもいいんだってことに気付くことができてよかった ね。今こうしてる時でも、もう新しいことを始めたいと思ってるんだ。今はファッ ションデザインにすごく興味があるんだよね。実際にファッションの小物とかのデザ インをやり始めているんだ。あとは建築かな。ビルの設計やインテリアを手掛けて る。常に幅広くいろいろなことをしていたいと思っているよ。それらは結局、僕自身 の所に帰ってくるからね。そういえば子どもの頃から何でもしたがる子だったな。そ していつも一番じゃないと気が済まなかった。もちろんすべてにおいてね。アーティ ストとしてもデザイナーとしてもね。

C:あなたのデザインはどれもユニークな形をしていますよね。どういったものか らインスピレーションを受けるのですか?

KR:インスピレーションていうのは日常そのものだと思う。人間の蓄積された経験か らくるものだね。例えば、携帯電話をデザインする企画があったとするでしょう。で も僕はそのために他の携帯電話のデザインを見たりしない。まずは人が使う物だから、人間にとって使いやすい形を考える。つまり実用的でなくてはならない。僕の場 合は、コンピュータ上のデザインツールやプログラム技術なんてことも重要だけど ね。あとはプラスチックなどの新しい素材。これも重要要素。一度にいくつものプロ ジェクトを抱え込むなんてざらだから、そこで関連性が出てくることもあるかな。例 えばシンガポールでインテリアを手がけていて、同時にイタリアで時計のデザインを しているとするでしょう。それらがどこか似ていたりなんてね。60、70年代の空想的、非現実的風潮の中で育ってきたということも大きいと思うよ。デザインという観点からいったら、あんなにいい時代はなかったね。なぜなら、みんなが自分たちの生活を変えることに躍起となっていたからさ。

C:あなたはDJもするそうですが、音楽とデザインになにか関係性はあるのですか?

KR:音楽って形のないデザインみたいなものだと思うんだ。原動的で、感覚的で、誘惑的で、人間臭くて、日常の物語みたいな…まるでデザインと一緒だよ。音楽を作ることは、一つのテーブルをデザインするのと同じことなんだ。それに音楽はとても大衆的で流行性がある。工業デザインにおける大量生産みたいだ。そう考えると、デザイン自体をアートという観点で見るのは違うような気がするけどね。みんなの心に残るような音楽を作り出すのと同じようにモノを作ることができる。でも多少は実際にカタチを残す方が難しいのかな。

C:今後の予定は?

KR:今実は、世界25ヵ国で“70’sプロジェクト”にちょうど取りかかってるところなんだ。ジュエリー、時計、靴、電話、コンピュータ、家具、照明、インテリア、レストラン、ショップ、建物、ホテル、バキュームクリーナーなど、あらゆるものをデザインしてるんだ。今ブラジルのある会社に頼まれて、すべてプラスチックでできた靴を作っているんだ。今朝ちょうどそのサンプルが届いたところなんだけど、出来上がってきたものを見て、ワクワクするのと同時に何か物足りない感覚がいつもあるんだ。ものを創ってる人はみんなそうだと思うよ。創造は抽象的なものでしかないからね。どこまでいっても“完成”しないような気がするな。



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Karim Rashid(カリム・ラシッド)
インダストリアルデザイナー。エジプト、カイロ出身。イタリアやカナダでデザインを学んだ後、1993年ニューヨークにスタジオを構える。現在に至るまで、建築、インテリア、ファッション、音楽など幅広い分野で活躍。その独特のフォルムと、特殊な素材を使用したデザインで一躍有名に。その他数多くの国際的な栄誉ある賞を受賞。70点を超える作品がMoMAをはじめとして、サンフランシスコ近代美術館、モントリオール装飾芸術美術館などのコレクションに収められている。



text by Kazumi UMEZAWA, photo by Noho KUBOTA
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