『COOL』は、世界で活躍するアーティストやニューヨークで注目のアートシーンなどを紹介していくアートマガジンです。創造するということ、かっこいいものを見ること、そこから感じる何かを世界中で共感できたらおもしろい!文化が違うとこんな違ったかっこよさもあるんだ!そんな発見・感動をしてもらえるボーダレスなアートマガジンを目指しています。現在、全米各地やカナダ、フランス、日本、中国などで発売中。誌面ではなかなか伝えられないタイムリーな情報や、バックナンバーに掲載されたインタビューなどをこのブログで公開していきます。
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沸き上がる歓声、鳴り止まない拍手。大歓声に包まれた会場で、車椅子に乗って舞台下に現れた Fred Benjamin は、ゆっくりと立ち上がって振り向き、片手を上げて笑顔で観客の声援に答えた。2003年の秋、恒例の特別講演で日本に訪れていた Fred Benjamin は、突如脳卒中で倒れ、一時は危篤状態にまで陥った。それから1年半余り、奇跡の復活を遂げた Fred Benjamin の復帰後初の公演は、大成功のうちに幕を降ろした。半年近い入院生活を経て、未だ麻痺が残る身体にもかかわらず、その不屈の精神で今回の公演の全ての振付けを行ったFred Benjamin。彼のダンスに対する情熱と、公演に賭けた意気込みについて本人に語ってもらった。
COOL:まず、あなたのプロフィールについて教えてください。
Fred Benjamin:名前は Fred Benjamin。ボストンはマサチューセッツ出身だ。幼い頃にダンスを始めて、さらにキャリアを積むために1962年にNew Yorkに移って以来ずっとここに住んでいるよ。
C:ダンスを始めたきっかけは何だったのですか?
FB:4歳の頃、僕の姉達がダンスを習っていてね。母親は彼女達をレッスンに連れていくのに僕も一緒に連れていかなきゃいけなかった。僕は末っ子だったしね、目を離しちゃいられなかったんだね。いたずらっこだったしな(笑)。それで結局僕もダンスクラスに入る事になった。それが全ての始まりだったよ。
C:本当に長い間ダンサーとして活動をされたわけですが、ダンスをするにあたって大切な事とはなんでしょう?
FB:バレエクラスでのトレーニングは僕にとって本当に大事だった。バレエのトレーニングのおかげでこれだけ長いキャリアを続ける事ができたといってもいい。ニューヨークに移って来てからもバレエを習っていたし、その後は『Hello Dolly』や『Promises Promises』というミュージカルもやった。『Hello Dolly』を演っていた頃には、自分のダンスカンパニーを始めて実験的なダンスも始めたんだ。それは1968年の事だった。とにかくずっとダンスを続けてきたんだ。
C:では、あなたにとってダンスとは何ですか?
FB:難しい質問だな。ダンスは僕が生涯続けられるものだし、ダンスこそ僕を前に進めてくれる。それほど僕にとって大切なんだ。ダンスがないとおかしくなっちゃうだろうね(笑)。
C:今回の公演では“Destiny’s Child”や“R. Kelly”といった最近のR&Bから、モダンジャズまで様々な音楽を使用されていますが、これは全てご自分でお選びになるのですか? また、それらはどうやって選ぶのでしょうか?
FB:曲は全て自分で選ぶよ。音楽を聴くと、音楽が僕に話しかけて来るんだ。ダンスとしてどうしたら良いか伝わってくるんだよね。
C:歌詞が話しかけてくるのですか? それとも音楽がですか?
FB:主に音楽だね。そのアーティストが伝えようとしているもの自体がだ。言葉だけじゃなくて、声そのものとかね。
C:ではインスピレーションは一体どこから得ているのでしょうか?
FB: いやあ、わからないな(笑)!とにかくインスピレーションがそこにあるんだ。音楽を聴くと頭の中に絵が見えるんだよ。それでこの曲をこういうダンスにしようって自然にわかるんだ。時には曲を聴いても何も見えてこない時もある。それは単に音楽を音楽として楽しむ瞬間だよね。僕にとって音楽を聴く事はほとんど仕事みたいなものだけど、自分で無理に絵を見つけ出す事はできないんだ。でも絵が見えてくる時は自分でコントロールなんてできない。とにかく向こうからやってくるんだ。
C:それは感情や気持ちとしての絵が浮かんで来るのですか? それとも実際にダンサーの体の動きが見えてくるのですか?
FB:そうだな…音楽が僕に絵を描いてくれるみたいなものだな。そしてその絵を今度は僕が観客に舞台で描いてみせるんだ。ダンスとしてね。
C:日本で脳卒中で倒れられてから、手術、治療、休養という長い期間ダンスから距離を置かれていたわけですが、その前と後では、ご自身や振り付けに何か変化はありますか?
FB:本当に長い期間だった。でも、何も変化はないよ。僕の中でダンスは常に続いていた。僕は同じ人間だしね。ただ少し変わった事といえば、今はもっと精神的に活動するようになった。というのも、以前は体を動かして振り付けをしていたし、そうすることによって自分が何を求めているかダンサー達に伝えられたけれど、今は(身体が不自由だから)言葉にするしかないからね。だからどんな振りを付けたいのかをダンスメンバーに伝えるために、言葉付きの絵を描く事も覚えたよ。自分だけの特別な言葉も作ったさ。そうやってダンサーに振り付けたけれど、やっぱり全てを言葉で伝えることはできなかったかな。それでも、今では本当に幸せに思っているよ。
C:今回のショーは復帰後初の作品ですが。
FB:とにかく幸せだよ。そして僕の為にまた戻って来てくれたダンサー達にも本当に感謝している。
C:あなたのショーで踊るダンサー達も、黒人、白人、アジア人と人種を問わず色々な人がいますね。彼らを初めとして、世界中にいるダンスをする若い人達についてどう思いますか?
FB: 彼らは本当に、本当に勇敢だと思うよ。なぜならダンスの世界は厳しいからね。それを克服して、実現させるのは非常に大変なことだ。だから新しいダンサー達には敬意を表するよ。それに僕は人種には興味はないんだ。僕が興味あるのは、ダンサーが持つダンスに対する愛情、ただそれだけなんだ。
C:今後のプランについて教えてください。
FB:とにかく常に仕事を続けていきたいと思っている。今までたくさんダンスの仕事をしてきたし、脚本も書いたりもした。芝居の脚本だね。でも書くのもいいけど、やっぱりダンスほどエキサイティングで満足を得られる仕事はなかったから、やっぱりこれからもダンスをやっていくよ。
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Fred Benjamin(フレッド・ベンジャミン)
1944年マサチューセッツ州ボストン生まれ。4才よりダンスをはじめる。1963年〜66年Talley Beatty Companyで踊り、Talley Beattyの影響を強く受ける。その後、ニューヨークに拠点を移し、『The Fred Benjamin Dance Company』を設立。Talley Beattyのモダンにバレエの要素を加えた“バレエ・ジャズ”という新しいジャンルの確立に貢献した。
text by Takuya KATSUMURA, photo by Noho KUBOTA
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