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『COOL』は、世界で活躍するアーティストやニューヨークで注目のアートシーンなどを紹介していくアートマガジンです。創造するということ、かっこいいものを見ること、そこから感じる何かを世界中で共感できたらおもしろい!文化が違うとこんな違ったかっこよさもあるんだ!そんな発見・感動をしてもらえるボーダレスなアートマガジンを目指しています。現在、全米各地やカナダ、フランス、日本、中国などで発売中。誌面ではなかなか伝えられないタイムリーな情報や、バックナンバーに掲載されたインタビューなどをこのブログで公開していきます。
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壁に取り付けられた様々な形態の物体。光に照らされたそれらの物体から人の横顔や歩く姿、座り込む少女といった“影”が浮かび上がる。一瞬、わが目を疑ってしまうような摩訶不思議な光景に思わず息を飲む。ニューヨーク在住のアーティスト山下工美が創り出す幻想の世界だ。日本でも「奇跡体験アンビリーバボー」や「金スマ」といった番組で取り上げられ、にわかに注目を浴びた彼女だが、その素顔は至って自然体。そんな彼女に、雑誌メディアとしてはじめてニューヨークのスタジオで独占インタビューを行なった。

COOL: まず山下さんの経歴を教えてください。

Kumi Yamashita: 中学を卒業後、日本の高校に入りましたが、すぐにアメリカの高校へと留学しました。その後、イタリアへ渡り、またアメリカに戻って大学を卒業しました。
スコットランドを訪れた際に、グラスゴー大学の建物に魅かれたことで、そのまま大学院に入学しました。

COOL: アートをはじめたきっかけを教えてください。

Kumi: はっきりとはわかりませんが、あえて言えば幼稚園の頃からだと思います。いわゆる“お絵かき”が大好きでいつも描いていました。母親の顔を描いて
髪など紫に塗ったりして(笑)、母親にも先生にも褒められたのを憶えています。その時点で正しい絵の描き方、マニュアルみたいなものを押し付けられていたら、今の私はなかったかもしれません。

COOL: 現在の「影」を使った作品は、どのようにして生まれたのですか?

Kumi: これも、“いつ”とかは自覚がないです。やはり小さな頃から“光と影”に魅かれていたのではないでしょうか。夕暮れ時に変化していく空を見て、いちいち母親に報告していたぐらいですから。その変化する様子や影などを“きれい”と思ったのでしょう。私が“きれい”と思うものは自然の中で発見することが多いです。多くの人はそうだと思いますが、特に私は“きれいだ”と感じるものに対してに特別な興味を持つ傾向にあるようです。

COOL: 最近、日本のメディアでも取り上げられて話題になっていますが、何か身の回りで変化はありますか?

Kumi: 全くありません。実は話題になったことも知りませんでした。ただ、自分が全く考えてもいなかった感想などを聞く機会は多くなり、多種多様の視点で捉えられた自分の作品についての意見を聞けるのは、とても興味深くて面白いです。作家の観点や意識を超えた新たな発見が第三者から聞けると、「えっ、そうだったんだ!」と思ったりして(笑)

COOL: 日本のテレビ番組に出演した感想は?

Kumi: 疲れました(笑)。ニューヨークから作品を持って行き、ほとんど徹夜状態でスタジオ内に設置・展示しましたから。私の作品は、光を当てながら一から組み立てて現場で仕上げます。当然作品は毎回微妙に変化していて、全く同じものというのは二度と作れないのです。

COOL: インスピレーションの源は?

Kumi: 常に“Happy”な状態でいることではないでしょうか。楽しい状態をキープできていれば、自然とアイデアが湧いてきます。アイデアを求めようとすればするほど、良い作品はできません。良い作品ができるときというのは、必ず自分自身が楽しんで制作しているときです。その楽しい状態が少しでも崩れてくるようであれば、制作はいったん中止して全く違うことをやったりします。例えば、セントラルパークの野草摘みツアーとかに参加したりして(笑)、楽しい気分を違うフィールドで味わいます。私にとって“Happy”な状態であることは普通であると同時に、とても大事なことでもあるのです。

COOL: 影響を受けたアーティストはいますか?

Kumi: あまり他の作家の作品を見ないし、よく知らないのですが、あえて言えば、ギリシアのパルテノン神殿建築に関わったフェイディアスという彫刻家が好きです。神殿の屋根の上に制作した彫刻群のエピソードを聞いてからとても興味を持ちました。
フェイディアスはアテネのパンテオンの庇に建つ彫刻郡を完成させたのですが、アテネの会計官は彼の支払い請求書に対して「彫刻の背中は見えない。見えない部分まで彫って請求してくるとは何事か」と怒り心頭で支払いを拒否したんです。そこで彼はこう応えたんですよ、「そんなことはない。神々が見ている」…この話を聞いてからとてもフェイディアスが好きになりました。作品と言うよりも彼の作品制作に対する精神面な部分に強く共感したからです。

COOL: NYに移った理由は?

Kumi: 「セサミストリート(アメリカでもっとも有名な子供向けテレビ番組)」を見て育ったので、(ニューヨークには)昔から自然と興味を持っていました。あまり歳を取ってから来るとハードではないかと思い、2年くらい前に移ってきました。特にアートに接するためとかいう目的ではありません。実を言うと、最初はとても恐怖感のほうが強かったんです。でも実際の暮らしはとても自然体でいられて楽しいです。ここは外国人がいない街だと思います。だから人間対人間というレベルで人と接することができるんだと思います。それが楽しい理由のひとつかもしれません。

COOL: 作品制作のプロセスは?

Kumi: プロセスですか…先ほども言いましたが、私の作品作りの一番大事な部分は常に自分が楽しいと思える状態でいられること。この状態でないと絶対に納得のいく作品は作れません。楽しい状態であるときには、アイデアが自然と湧いてきます。意識してアイデアを考えることはありません。アイデアが浮かんできたらそれを紙の上にスケッチします。その後に実際に立体の作品へと移ります。まずは床の上で基となるパーツを置いて横から光をあてながら作っていきます。それができたら今度は実際に壁に移していくのです。

COOL: 影の部分と影の基になる原型が全く違う形で、いわば抽象から具象を生み出すともいえます。その発想はどこから?

Kumi: まずは実際の影をモデルにして、そこから影の基となる作品制作に移ります。私自身はとても具象的なので、抽象をする作家さんをとても尊敬してしまいます。抽象の世界は私には考えもつきません(笑)作品の発想がどこなのかは自分でも全くわからないのです。上のほうからこうやって(アイディアが)降りてくるような(笑)気がついたら手が勝手に動いていたみたいな感覚ですね。

COOL: 山下さんにとって「アート」とは何ですか?

Kumi: この間、友人と話をしていた時に偶然、会話の中で発見したのですが、「アート」とは「Act of God」なのではないかと。作品づくりの中で常々思っていることは、自分が作っているのではなく、もっと高いところにいる何か、それがGodなのかはわからないけど、自分ではない他の誰かからの啓示を作品として表しているのではないかと思っています。

COOL: 今後の活動と将来の展望について教えてください。

Kumi: 全くわかりません(笑)将来の自分の作品をどう展開しようとか考えたことはありませんが、どうしたら楽しく生きていけるかという事はいつも考えています(笑)なぜなら私にとって“楽しく生きる”ことこそが、新しいインスピレーションの源や新しい作品を生み出す力となるからです。良い作品をつくることさえできれば、後の展開は自然に良い方向へと広がっていくように思っています。それって楽観的すぎます(笑)?


Interview by Sai Morikawa, Photo by Akiko Tohno
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