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『COOL』は、世界で活躍するアーティストやニューヨークで注目のアートシーンなどを紹介していくアートマガジンです。創造するということ、かっこいいものを見ること、そこから感じる何かを世界中で共感できたらおもしろい!文化が違うとこんな違ったかっこよさもあるんだ!そんな発見・感動をしてもらえるボーダレスなアートマガジンを目指しています。現在、全米各地やカナダ、フランス、日本、中国などで発売中。誌面ではなかなか伝えられないタイムリーな情報や、バックナンバーに掲載されたインタビューなどをこのブログで公開していきます。
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2005年1月12日、NYのWest Villageのライブ・ハウスS.O.B.’sでマンディ満ちるのライブが行われた。ライブ1時間前の忙しいヘアー・メイク中に取材に応じてくれた彼女は大変気さくで、とても一児の母親とは思えない抜群のスタイルと、綺麗な長い黒髪がとても魅力的だった。そんな彼女の現在の音楽に対する思いについて語ってもらった。

Monday:とりあえずありのままの自分を表現できればいいと思っています。(詞を)書く時は、自分の伝えたいことや、世界で今何が起こっているのかも考えつつコンセプトを考えるのですが、音源は自然に頭に浮かんでくるコードやメロディーに任せます。最近は曲作りに関してのこだわりは昔に比べて凄くありますね。後はもうただ楽しく、上手くできればいいなと考えています。

COOL:上手くできれば・・・と考えるのですか?

M:今は子供がいるので以前のように毎日練習できないのです。声って筋肉で出るものだから、急に人前に立つと、長い間運動していなかったのにいきなりマラソン!みたいな感じで。しかもNYのミュージシャン達は超一流なので、そんな彼らと一緒に演奏できることは、私にとってものすごく幸せだし、こんな私でいいのかなって気にしますね。でも何よりも自由な鳥のように飛べて、音楽を楽しめればいいなと思っています。

C:新作『Naked Breath』は今までのマンディさんの音楽とはがらりと変わった雰囲気ですが、リリースまでに、レコード会社との取引や音楽業界への考え方など、色々と変化があったようですね。

M:レコード会社を辞めてから、今、自分自身がどういう音楽をやっていきたいかを考えました。これからの音楽家としての人生を考えると、私は卵からやっと小学生まで上がってきた感じ。これからもっと成長していかなければならない。そう考えたとき、今までやってきた音楽と今やりたい音楽の間のギャップに気づきました。今まで一緒にやってきたミュージシャンや今まで支えてきてくれたファンのみなさんは、今まで私がやってきたシックでトレンディなクラブ音楽を好きでいてくれたと思います。でも私としては同じスタイルを続けるのではなくて次のステップを踏んでいきたい、そのためにはどうしたらいいかなと考えていた時に、主人からArtist Shareの方を紹介されたんです。これ、実はとても難しいんですよ。全部自分で一からやらなきゃいけないから。今まではレコード会社やスタッフが全て助けて下さっていたのですが、これからは全て自分でやらなくてはいけない。これは本当に大変ですね。でも私の周りの友人らに助けられ、本当にありがたく思っています。(楽屋にいたメイクやスタイリストの方々に頭を下げて)お世話になっています。

C:『Artist Share』について教えていただけますか?

M:2000年から始まったインターネットの会社です。オーナーであるブライアン・キャメリオ氏もミュージシャンで、ジャズが主体となる音楽を作っているので、彼の周りにもジャズミュージシャンが多いのです。彼らの基本的な業務はアーティストのプロジェクト実現のサポートです。登録された各アーティストの様々な作品をファンがホームページ上で予約できるようになっています。完成された作品だけでなく、バイヤーがアーティストのいろんな面を見れるようにメーキング中の曲やアルバムも見ることが出来ます。ブライアン氏は、レコード会社が与えることのできていないアーティスト達自身の満足を実現するためにArtist Shareを創りました。レコード会社はもちろん「会社」なので利益を得なければいけないし、売れる音楽を出していかないと生き残っていけません。そしてアーティスト達は会社の指向に従った商業的な曲を作ることになる。アーティストだって生活がかかっているし、レントだって払わないといけないし (笑)。最初アートをやり始める人って、「自分」があって「自分のやりたいこと」がわかっているんですね。でも結局会社の圧力によって妥協せざるを得なくなり、「自分のやりたい事」が壊れていくというのは、とても悲しい事だと思います。彼はそれを見ていて、「これではだめだ!」と思い、このArtist Shareを作ったのです。この会社のコンセプトは「アーティストにクリエイティブな自由を取り戻してもらい、やりたいことを素直にやろう」、そしてこのシステムは「会社の儲け目的の部分はすべてカットして、アーティストが直接売った分だけ利益になる」という感じです。ジャズアーティストのCDの売り上げ枚数なんて、多くなくて実際何千枚何百枚っていう世界だから。私自身は自分をジャズアーティストだと思っていないのですが、この音楽作りに対しての自由さっていうところがとても嬉しかったのです。彼らと組んでからはいきなり私に凄いエネルギーが沸いてきて、創造力が生き生きしてきたんです!

C:今は「これぞ」というところでやっている感じですか?

M:まだはじまったばかりで、最初の作品しか作っていないからなんとも言えないのですが(笑)。この(新しいアルバム)『Naked Breath』は、私にとって初の全曲アコースティックな作品で、ずっと昔からやりたかったプロジェクトなのにどこのレコード会社もやらせていただけませんでした。それでArtist Shareに参加してからやっとこのように形にできたことがすごく嬉しくて!


最後に彼女はそう言って、幸せ満点の笑顔を見せてくれた。

昨年12月にリリースされたアメリカでのデビュー・アルバムとなる最新アルバム『Naked Breath』は今までのクラブ系とはまったく違った、落ち着いた生の音が楽しめるギター(アダム・ロジャース)とヴォーカルのみのデュエットアルバム。この作品では、本来の彼女の魅力が存分に引き出されるとともに、改めて彼女のその歌声の美しさに驚かされる。インタビュー後のライブでは、最新作『Naked Breath』はもちろん、2002年リリースの『Episodes in color』、2003年リリースの『Moods』からの曲を中心とした最高のパフォーマンスだった。美しい声と素晴らしいジャズ演奏がとてもマッチしていて、しっとり聴かせるナンバーからジャズバンドならではの生の迫力までを存分に味わえる、夜のお酒にちょうどよいマッタリとした居心地に酔いしれた。




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マンディ満ちる
1963年東京生まれ。ジャズピアニストの秋吉敏子、ジャズサックス奏者のチャーリー・マリアーノの間に生まれる。日本映画界で女優として活躍していたが、91年、アルバム『mangetsu』のリリースをきっかけにシンガーソングライターとしてのキャリアをスタート。ジャズを基盤としたアシッドジャズ、ソウル、ドラムンベース、ラテン、ブラジリアン、など様々なジャンルで多様な楽器を取り入れた無国籍な音楽を作り続けている。またシンガー/ライターとして、DJ Krush, Mondo Grosso, Kyoto Jazz Massive, Basement Jaxx, UA, Masters At Work, Joe Clausell, Lisa Ono などとの音楽製作をはじめ、birdへの楽曲の提供やヴォーカル・アレンジなどバラエティに富んだサウンドワークを務めたりと、幅広くミュージシャンとしての才能を発揮している。2000年に東京からNYへと活動の拠点を移し、現在は夫であるジャズトランペッターのアレックス・シピアギンと1人息子と共にロングアイランドに在住。

Monday Michiru

Artist Share

S.O.B.’s

Album ''Naked Breath'' Release Coordinator Contact : Keiko Ohashi
cyberneticsoul@nyc.rr.com

Photographer // Juan Chami
Styling & Jewelry // Natsuko Hayashi
Hair & Make-up // Takashi Matsuzaki

text by Mieko SAI, Sayako MAEDA
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