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『COOL』は、世界で活躍するアーティストやニューヨークで注目のアートシーンなどを紹介していくアートマガジンです。創造するということ、かっこいいものを見ること、そこから感じる何かを世界中で共感できたらおもしろい!文化が違うとこんな違ったかっこよさもあるんだ!そんな発見・感動をしてもらえるボーダレスなアートマガジンを目指しています。現在、全米各地やカナダ、フランス、日本、中国などで発売中。誌面ではなかなか伝えられないタイムリーな情報や、バックナンバーに掲載されたインタビューなどをこのブログで公開していきます。
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近年、世界中から注目を浴び、莫大な外貨を稼ぎ出している中国のアート市場。それに着目した中国当局はアートにおける表現の自由を容認し、市場の活性化を推進する方針を打ち出した。それに伴い、中国のアート市場は肥大の一途をたどっている。

急速な経済発展の渦の中で異様なまでのエネルギーを放つ大都市、上海。そこには無数のギャラリーがひしめき合うアートスポットや、日々進化を続けるアートシーンが存在する。この街で今、「莫干山路50号倉庫群(通称- M50 -)」と呼ばれるエリアが人々の注目を集めている。


「莫干山路50号 倉庫群(以下M50)」は上海駅より歩いて15分ほどの距離にあり、蘇州川という澱んだ河川の沿岸に位置する。ここはかつての紡績工場跡地で、2002年から市政府の指導により広大な空間を利用した現代アートスペースとして変貌を遂げた。かつては「春明芸術産業園」という名称だったM50は、凄まじい勢いで変貌し続ける上海の開発地区の1つであり、絶え間なく稼動し続ける工場施設と共存している。

経済発展の著しい大都会の様相に反して、地元住民の生活感が漂う、古びて雑然とした街の隅にM50は在る。広々とした空間と、昔の面影を残す建築が醸し出す不思議な魅力に引き寄せられるように、どこからともなく画家やデザイナーたちが次々と集まる。エリア内にはいくつもの棟が立ち並び、中国国内だけではなく、世界各国から集まった120軒余りの画廊やアトリエ、カフェなどがひしめき合い、それらが内外から集まる情報の交換の場としての役割も果たしている。


今から2年前、ここM50で行われた非営利アートプロジェクト「Matchmaking At Suzhou Creek」には、自らをプロデュースして国際舞台で活躍する22人のアーティストが世界中から集まり、現地の中国人アーティストとの期間限定の異種文化共同体を作り上げた。このプロジェクトがアーティスト同士の親密な共同生活をそのままプロジェクトに反映したことで話題を呼び、M50の知名度を一気に押し上げるきっかけにもなった。

上海という街では、森羅万象、ありとあらゆるものが渾然一体となり、そこから生み出されるパワーが人々の生活や経済だけでなく、上海のアートシーンをも加速度的に成長させている。M50はまさにその中心的存在であり、そこで目にするものはまさしく、現代に息づく上海アートシーンの真の姿に他ならないのだ。

莫干山路50号(M50)サイト http://www.m50.com.cn/



text, photo by Hiromi NAKAMURA
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ロンドンの中心部、テムズ川沿いのやや入り組んだ通りを抜けたところに、バトラーズ・ワーフと呼ばれる地区がある。そこは以前貧しい倉庫街であったが、現在は、イギリス出身のデザイナー、テレンス・コンランの手によって、お洒落な雰囲気のエリアへと変貌を遂げつつある。その街並みの一角に突如現れるミニマルなデザインの真っ白な建造物、これがロンドンのデザインの歴史を象徴する「Design Museum」だ。

ミュージアムでは、恒例の「DESIGNER OF THE YEAR」展が開催されていた。このイベントは、イギリス出身もしくは現在イギリスで活躍するデザイナー、デザインチームやプロジェクトを対象とし、その中から特に優れた活動を行ったデザイナーを投票によって選び出す。優勝者には賞金£25,000が与えられるという注目の一大イベントだ。本年度はThe Guardian(イギリスの高級紙「The Guardian」のエディトリアルデザイン),ヴァーチャル・バンド「GORILLAZ」のヴィジュアルを手掛けた鬼才アニメーターJamie Hewlett、国際的な人道救済活動で知られる建築家Cameron Sinclair、イギリスを代表するプロダクトデザイナーTom Dixonといった顔ぶれがノミネートされた。投票のシステムは、5人の審査員による投票の他に、誰もが気軽に参加できる一般投票制も導入しており、ウェブ上でも簡単に投票することができる。

別のフロアでは、ロンドンが生み出したデザインコレクションの数々が展示されている。その中でも特に注目したいのはデザイナーズチェアーの数々。プレイステーションやテレビ用に作られたというTom Dixonの「Playstation chair」をはじめとして、S字型に弧を描いたボディーに1本脚で立つ「S Chair」。冠型のメタル製の「Crown Chair」。ハートがそのまま形となった、Ron Aradによる「Soft Heart」など、ユニークで個性豊かな作品が並ぶ。

また、ロンドンのアートの代表ともいえる“ロック”にまつわるデザインのコレクションも見逃せない。1980年の創刊以来ロンドンのロックシーンを綴ってきた、ファッション・カルチャー雑誌「i-D」による、ロンドンっ子のロックヘアスタイルや、「Beatles」、「Rolling Stones」に代表されるアーティストのレコードジャケットなどが、ロンドンのロックの歴史を象徴する要素の一つとして紹介されている。

その他にも、ロンドンのシンボル的存在である赤い電話ボックス、町並みに溶け込む赤い2階立てバスや、長い歴史を持つ地下鉄マップなどのデザインを通して、ロンドンの人々の暮らしを肌で感じることができる。そしてさらには、2012年のオリンピック開催に向けて進められている話題の「オリンピックパーク」のプロジェクトの紹介もあり、現在、過去、未来と、ロンドンのデザインの歴史を余すことなく堪能できる。

もはやデザインは、私たちの日常生活とは切っても切り離せない存在だ。この「Design Museum」に訪れると、人類がデザインと共に歩んできた歴史や、いかにデザインが私達の暮らしに彩りを与え、そして塗り替え、より快適で豊かなライフスタイルを提供し続けてきたのかを改めて認識させられる。



text, photo by Yuka TAKAO

長く続く通路の両側に吊るされた美しく幻想的な写真の数々。通路脇には小石が敷き詰められ、薄暗い会場内には温かな光の筋が差し込んでいる。入り口をくぐった瞬間に別世界に来たかのような雰囲気に呑み込まれてしまうこの一風変わった展覧会は、カナダ生まれの写真家グレゴリー・コルバート(Gregory Colbert)氏による写真展「ashes and snow」だ。スポットライトに照らされた100点以上もの写真と、巨大スクリーンに映し出されるフィルム映像が、野生動物と人間の触れ合いと美しい調和を見事に捉えている。

コルバート氏は14年間以上の年月をかけ、エチオピアやケニアなど30カ国以上の国々を放浪しながら写真と映像を撮り続けた。彼は人間と動物が密接に共存する国々をまわり、静かに、しかし力強く情熱的に流れる時間を数多く記録している。目を疑うほど幻想的で叙情的な彼の作品は、実はどれも一切加工を施されていない。すべて彼がレンズを通して実際に見てきた現実の世界なのだ。またこれらの写真は通常の印画紙ではなく、全て日本の徳島県の紙工場で作られる「阿波手漉和紙」と呼ばれる大きな和紙にプリントされている。


今回この写真展のために用意された「ノマディック(放浪)・ミュージアム」とも呼ばれるこの不思議な建造物は、紙を活用した建築で世界的に名を知られる日本人建築家、坂茂氏によって設計されたものだ。サンタモニカのピアー(埠頭)に突如として現れたこの巨大ミュージアムは、リサイクル可能な貨物コンテイナーや紙パイプなどで構成され、この「ashes and snow」と共に長い年月をかけて、文字通り世界を“放浪”する。ゴールド色の巨大な柱がそびえ立つ入り口から眺めると、その迫力にはただ圧倒されるばかりだ。


コルバート氏は、人間と動物がかつて共有していたハーモニーの再発見を求めていると語る。文明と社会の喧騒から逃れ、彼の作品と、まるで時が止まったかのような静かな空間で自然や動物と対峙することで、忘れかけていた大切な何かを見つめ直す。彼の作品にはそんな彼の想いがはっきりと映し出されている。

「ashes and snow」は2002年にイタリアを出発。その後、2005年にニューヨークのハドソン川に水上ミュージアムとして登場し、カリフォルニア州のサンタモニカを経て、2007年3月にはいよいよ東京・お台場に上陸する。



text, photo by Yuka KAWAGUCHI

近年、革新的な発展を遂げ、国際的にも注目を集めはじめているスペインの現代建築。ニューヨークにある近代美術館(MoMA)で行われた「On-Site: New Architecture in Spain」展では、スペインを代表する53の様々な建築プロジェクトが紹介された。美術館、スタジアム、ホテル、国際空港など、着工中もしくは構想段階のプロジェクト35件と、ここ数年以内に完成した最新の現代建築が18件。それぞれのプロジェクトの模型と、設計図やコンセプトを示した大型プレゼンテーション・パネルによる構成だ。
 
今年のはじめに完成したマドリッドの「Barajas Airport Terminals(バラハス国際空港)」は、自然を取り入れた斬新なデザインと最新の輸送システムが話題を呼んでいる。設計は、パリの「ポンピドーセンター」の建築などで知られる、イギリスの建築家、リチャード・ロジャースが手掛けた。彼はバルセロナ市長が推進する都市戦略協議会の顧問も務めており、この空港の他にもスペインにおける都市計画に深い関わりを持っている。年間約4000万人以上の乗客が利用するというこの巨大な国際空港は、観光産業が重要な地位を占めるスペインにおけるインフラストラクチャーの近代化の象徴的存在だ。特に目を引くのは、この空港のデザインの特徴とも言える、竹を素材とした大きく波打つ曲線を描くフォルムを持つ屋根と、それを支える巨大な翼をイメージした鮮やかなイエローの支柱だ。この天然の素材を活かしたダイナミックなデザインが、天窓から取り込まれる自然光と見事な調和をみせている。
 
また、スペインで活躍する若手建築家のホープ、Enric Ruiz-Gali(Cloud 9)と、ニューヨークで活躍するインタラクティブ・ライティング・アーティスト、James Clarのコラボレーションによる「Hotel Habitat」の一風変わった試みも面白い。バルセロナに建築中のこのホテルは2007年完成予定。ホテル全体は約5000個に及ぶLED(発光ダイオード)ですっぽりと覆われ、日が落ちるとそれらが自動的に点灯する仕組みだ。また、外壁の上層部にせり出したガラス張りのバルコニーも同時にライトアップされることで、LEDによって描き出されたホテルの輪郭の中に、まるでバルコニーが浮遊しているかのような幻想的な光景が夜空に浮かび上がる。
 
主要先進国の経済成長が減退している世界経済情勢の中で、スペインの経済は順調に成長を続けている。その中で打ち出された観光産業の近代化に伴う都市計画、それに呼応するように次々と生み出される高度な建築。今やスペインにおける現代建築は、デザイン性においても機能性においても、既に世界のトップレベルに達していると言っても過言ではないだろう。



text by Sei KOIKE, photo by Akiko TOHNO
    

今やニューヨークでその名前を知らない人はいないというほど、押しも押されもせぬトップアーティストの仲間入りを果たした村上隆。彼が次々と打ち出す斬新な企画は、ニューヨーカーに日本の「おたくカルチャー」というものを知らしめた。そんな彼に、現在に至るまでのニューヨークでの活動を振り返りつつ、現代アートへの思いについて語ってもらった。


COOL:アーティストとして、ニューヨークをもうひとつの活動の拠点に選んだ理由を教えて下さい。

村上隆:アーティストとしてNYを選んだのは、NYは現代アートの中心だからです。(自由に選択できるなら、日本にもっと近いハワイかカリフォルニアにしたかったけどね。)

C:ニューヨークのどのようなところに刺激を受けますか?

村上:色んな人が住んでいるところ。日本の良さと悪さを気が付かせてくれるところ。

C:村上さんが、いわゆる日本のアニメキャラクターやフィギュアなどを「世界に通用するアート」として認識するに至ったきっかけについて教えて下さい。

村上:日本でのアートで達成出来る事やそれに対する評価を考えると、どうしても西洋に比べて劣っていることに気が付きました。劣っている部分は認めるしかないのですが、やはり何事も西洋の基準により染まっているような気もしました。アートを捉えなおす為の試みとして、日本特有の文化が作り出す物に焦点を絞りました。それ以降、自分の中や周りの社会においても、マンガ、アニメ、フィギュアに、物凄い影響力や関連性を発見することができました。

C:村上さんがニューヨーク来た当時、アメリカの日本のアート(アーティスト)に対する評価というのはどのようなものだったのでしょうか?

村上:日本人のアーティスト全員に対する一つの決まった態度はなかったと思いますが、確かにその時の日本人はアメリカ、西洋の価値観の大きさに圧倒され、必要以上にに自らを意識させられ、あまり自由に制作が出来る環境ではなかったような気がします。

C:まだ売れなかった時代、何を「支え」にして活動を続けていたのですか?

村上:自分の中の「成功する」という強いモティヴェーション。また、中流階級より1ランク落ちたいわゆるブルーカラーの家庭に育ったことで、そこから脱出したい気持ちがあったことも否定できません。それにアートには必ず違う道、違うやり方があるはず!と強く信じていました。

C:なぜアメリカでは、これほどまでに「オタク」文化や日本のサブカルチャーが大衆に受け入れられたのだと思いますか?

村上:「しょうがない、日本のあの変な文化だ」と大目に見てくれているのではないでしょうか。しかしその疑いの目の裏側には、おたくの内向的な気持ちに同情するところがきっとあるはずです。

C:村上さんは以前、取材で「僕は日本では全然、展覧会をしたいとは思っていないんですよ。(後略)」と語っていましたが、日本と海外での村上さんのアートに対する評価の違いというか、温度差のようなものはどこから生まれてきているのでしょうか?

村上:西洋人にとって日本のポップなものは新鮮で新しいけれど、日本人にとっては普段から見慣れた確かな存在。それがいきなりアートというグラマラスで排他的な文化として発表されると、大きなお世話だ!ほっといてくれ!というようなリアクションがあるのも確かですね。日本でアートそのものの概念が西洋ほど普及していないのも事実で、逆に私がそのようなアート作品を作ることで、どこか日本を馬鹿にしているところがあると批評されることもあります。

C:昨年、ジャパン・ソサエティで行われた「Little Boy」展は、連日様々なメディアでも取り上げられ話題になりました。また今年2月には国際美術評論家連盟(AICA)より「ニューヨーク市で開催された最も優れたテーマの展覧会」にも選ばれました。村上さんは同展がアメリカのアートシーンにどのような影響を及ぼしたと考えますか?

村上:多様化した、と信じたいです。Little Boyはどちらかというとコンテンポラリーより、歴史とか社会の調査的な所もあったため、「シーン」とはまた違うと思いますが、例えば、Little Boyの後に、アニメ、かわいい、ゆるいものに触発されるアーティストたちは、前より自信を持って作品制作ができるようになったのであればうれしいです。

C:「カイカイキキ」や、日本での「GEISAI」のプロデュースなど、村上さんは若手アーティストの育成にも力を注いでいますが、そもそもアーティストのプロデュースをはじめようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

村上:一番最初に、アーティストのプロデュースをしようと思ったきっかけは、長い間手伝ってくれていたアシスタントに恩返ししたいと思った気持ちから。それから、日本における新世代のアーティストを育てる必要性と、マネジメントが必要な若いアーティストが周りにあまりにも沢山いたので、他にやってくれる人がいないならしょうがないという思いもありプロデュースをすることになりました。あと、西洋ではアーティストになることは非常に個人的で、他人のアドバイスや指摘を決して許さないところがありますが、日本では歌手やタレントはプロデュースされる、つまり養育されていくものとの意識が既にあり、簡単に参加するアーティストを見つけられたというのも関係があります。

C:村上さんは日本の美術教育に疑問を抱いていると聞きましたが、日本とアメリカでは美術教育に対する考え方にどのような違いがあるのでしょうか?

村上:アメリカでの現状を知らないので、なんとも言えませんがUCLAで客員教授を行った経験を踏まえて話すとすればですが、アメリカはその国のマーケットの現状を反映しているでしょう。大学を出てアーティストになるための知識(つまり美術史や、自分がやろうとしているものへの関連付け方)を学校で教えるのに、日本では先ずマーケットと制作環境がそこまで発展しておらず、学校で教える内容はいまいちリアリティに欠け、教育するべきところが教育出来ない、と言って良いと思います。

C:村上さんにとって「現代アート」とは何ですか?

村上:2つの意味があると思います。NY中心のアートシーンで見つかる流行りのもの。それと、世界中のアーティストそれぞれがシーンと関係なく制作しているもの。前者は、歴史に残る程の大きなものになることもあり、その時代の現代アートと認められます。後者はいつまでも真のクリエイティブ。



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村上隆
1962年、東京生まれ。アーティスト。カイカイキキ代表。
2003年、ニューヨークのサザビーズで、等身大のフィギュア作品「Miss Ko2」が、日本の現代美術作品の史上最高額で落札され話題を呼ぶ。その他、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションをはじめとした様々な企画を次々と打ち出し、海外において現代アーティストとしての確固たる地位を築く。特に2005年にニューヨークのジャパン・ソサエティで行われた「Little Boy:爆発する日本のサブカルチャー・アート」展は、連日様々なメディアで取り上げられ、今年はじめには、国際美術評論家連盟(AICA)より「ニューヨーク市で開催された最も優れたテーマの展覧会」にも選ばれた。



text by Sei KOIKE
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