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『COOL』は、世界で活躍するアーティストやニューヨークで注目のアートシーンなどを紹介していくアートマガジンです。創造するということ、かっこいいものを見ること、そこから感じる何かを世界中で共感できたらおもしろい!文化が違うとこんな違ったかっこよさもあるんだ!そんな発見・感動をしてもらえるボーダレスなアートマガジンを目指しています。現在、全米各地やカナダ、フランス、日本、中国などで発売中。誌面ではなかなか伝えられないタイムリーな情報や、バックナンバーに掲載されたインタビューなどをこのブログで公開していきます。
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チェロ、トロンボーンと2つの異なる楽器を駆使する稀有なアーティスト、Dana Leong。その名が今、急速に世界に広まりつつある。数年前にNYでライブ演奏を見た時はまだどこかあどけなさが残る青年であったが、その当時から既に存在感のあるプレイを聴かせていた。その後クラッシックからジャズ、ヒップホップ、R&B等様々なジャンルのトッププレイヤーと共演、映画やファッションショーでのパフォーマンス等の経験を積んで、その才能をさらに磨きをかけるため日々の努力を続けている。今年の春、待望のデビューアルバム『LEAVING NEW YORK』をリリースした。彼の瑞々しい感性と様々な要素の有機的な融合を見せ、新しい可能性溢れるサウンドが今、ニューヨークから世界へ向けて羽ばたこうとしている。


COOL : 子供の頃はどんな音楽環境で育ちましたか?

DL : 子供の頃の音楽環境はとても活気に満ちていたよ。僕はとても感受性の強い子供で、いつもエネルギーが有り余っていて非常に活動的だった。毎日僕にピアノを教えてくれていたシングルマザーの母と、バイオリニストになる為に練習を重ねていた兄のもとで育ったので、音楽的にものすごく恵まれていたんだ。兄の練習部屋の隣で生活をしていたから、18歳までには殆どのメジャーなバイオリンコンチェルトを自然と覚えていたよ。何年かピアノを学んでからバイオリンを習い始めて、その後にチェロとトロンボーンを始めた。母は僕をスクールバンドとオーケストラに参加させようとしていて、その構想をサンタクロースの話に巧くすり替えて、僕が8歳の時のクリスマスにサンタがチェロを、翌年にはトロンボーンをプレゼントしてくれたんだ。
それから僕は学校の勉強をしながら、両方の楽器のプライベートレッスンを受け始めた。そうやって自然にクラシック音楽を聴いていたんだけど、実は80年代当時に流行っていたロックやヘビーメタルを密かに崇拝しててね。母が出かけて留守番する機会があれば必ずヘビーメタルをかけて、疲れきって息がきれるまでソファーの上で飛び跳ねていたな。ジョン・ウィリアムスの映画のサウンドトラックも好きでよく聴きに行っていたよ。


C : どんな人に影響を受けてきましたか?

DL : 当然ながら僕の人生に於いて最初に多大な影響を与えたのは僕の母親かな。母は僕がお腹にいる時もピアノを弾いていたんだ。僕が1歳の時、母は僕をピアノに座らせて鍵盤と遊ばせていたんだけど、驚いた事に、僕は当時から(同じピッチで高音域と低音域に位置する)鍵盤の8音を判別して聞き分けていたそうなんだ。


C : あなたのインスピレーションやアイデアはどこからくるのですか?

DL : いろいろな方法があるけれど、まず言えるのは、集中し専念する事。初めは単なる模倣だったけど、今は僕が音楽を提供する他のプレイヤーに対して、ライブ演奏の時はその時の状況や環境、観客に対して心を集中させるようになった。次に、この世に存在するたくさんの音楽。僕は好きな音楽を聴きながら、常に新鮮なサウンドを探している。もうひとつは楽器から。その理由として僕は音楽を作る時、なるべく熟練したテクニックを使わないようにしているんだ。そうすることで誰もが新鮮でやりがいを感じられる。例えばただ一日中座って、僕が簡単に演奏出来るような曲を作っても、何も新しいものは生まれてこないよね?どんな方法にしても、自分だけの個性と演奏スタイルを発見したら、それを記録しておくことはとても重要だよ。




C : あなたはヨーコ・オノやスティーブン・スピルバーグといったトップアーティストと一緒に仕事をされていますが、そういった人達は、あなたの音楽キャリアにどんな影響を与えていますか?

DL : 彼女のようなアイコン的存在の人や、長年第一線で活躍している人と一緒に仕事をすることをとても光栄に思っていて、いつもエキサイティングしているんだ。
自分がどんな人間であれ、常に更なる成長の余地があるということを再認識させられるよ。スティーブン・スピルバーグに出会う前、彼は子供のように純真で常に周囲を質問攻めにし、誰からも何かを学びたがる人だという噂を聞いていた。「The Terminal」という映画を制作しているとき、実際に彼と会う機会があって、その噂は本当だと感じたね。僕は自分自身が好きになれるサウンドを常に探している。もし誰かが僕を惹きつける何かを持っていたらその機会を逃さない。幸運にも僕はこの上ないほどに才能ある仲間に囲まれているんだ。僕もスピルバーグのように周囲を質問攻めにする。彼らも僕がその答えを吸収して、常に新しい発展へのステップにしていることを理解してくれているんだ。


C : 現在のニューヨークのミュージックシーンについてどのように思いますか?

DL : アーティストにとってニューヨークで暮らすということは決して簡単ではないと思う。これといった目標もなく標準的な生活をするのはとても難しい。周囲の環境によって左右される心理状態が僕の作品にも直接影響する。僕は現実的なフィーリングに影響を受けやすいんだ。人々は多くの不満を抱えていて、その対象は政府、離職率、物価の上昇、アートへの資金不足、税金の不正流用など、数えればきりがない。それによって僕達のコミュニティとアートシーンは被害を受けているけれども、ポジティブな面もたくさんある。僕は情熱的に良い音楽をサポートしている人々を見つけることに全力を注いでいる。これだけ多くの新しいテクノロジーが次々と現れ、社会的には僕らがどの方向へ向かっているのかを判断するのは難しいけど、僕はイニシアチブを取っている自分と気の合う若者達と出会っているし、将来が楽しみな才能ある人々にもたくさん出会っている。NYは伝統、文化、チャンスが最大レベルで実行され、バラエティを持ち、共存する場所なんだ。


C : ニューヨークでミュージシャンとして仕事をする上で大事なことは?

DL : 僕にとって人生とは日に日に向上してゆくもので、もしそうでなければ変化をすべき時なんだと思う。ニューヨークに来たその日から、仕事でも私生活でも同じ事が言える。非常にベーシックなことがずっと僕の中に染み付いているんだ。僕にとって重要なのは、夢に向かって行動する、常にハードワークをして自分のベストを引き出す、物事を吸収し自分を成長させる、あとはそれを持続させる事かな。


C : ライブ演奏をしている時、何を感じていますか?

DL : ライブは僕の人生の一部だよ。将来どう感じるかはわからないけれど、今はいろんな意味で僕はライブを、ロマンチックな場面で得られる関係と、スポーツをしている時の興奮、チームワーク、競争、そしてアドレナリンが混じったものが交差したような感じかな。自分がリードしたりリードされたり、サポートしたりされたり、同調したり意見を述べたり。「真のパフォーマー」と呼ばれるようなアーティストが少なくなっているけれど、「真の音楽」は確かに存在しているんだ。


C : デビューアルバム『LEAVING NEW YORK』について教えて下さい。

DL : これは2006年3月にデビューアルバムとして自主制作でリリースしたもので、タイトルの『LEAVING NEW YORK』は、世界に僕達の音楽というギフトを与えるという意味の比喩的シンボルなんだ。僕達は自分達だけの為、あるいはニューヨークの為に音楽を作るのではなく、世界中の全ての人々に向けて作っているんだ。僕の大好きなミュージシャンも参加していて、僕のオリジナルの曲をプレイしてくれている。このCDでは様々なことを試みているよ。僕は以前から自分のバンドを持ってみたいと思っていた。それと同様に、「Chamber Music」、「Cinematic Harmony」やキャッチーなグルーヴに対する僕の愛情が自然に融合する音楽を作りたかった。「Cinematic Harmony」というのは、よく映画で耳にするような、豪華でダイナミックなオーケストラサウンドのことを指して僕が使用している表現なんだけど、B3オルガンやMoog(keybords)、ドラムを使ってファンクやグルーヴの要素も取り入れている。アルバムの仕上がりにはとても満足していて、皆本当によくやってくれたと思う。現在は2枚目のアルバムを制作しているところで、前作よりファンキーなものにするつもりだよ。


C : 最近の活動について教えて下さい。

DL : ニューヨークにある「Jazz Gallery」というジャズスポットでの月別シリーズをプロデュースしていて、才能あるミュージシャン達が僕の音楽を演奏してくれているよ。僕は才能ある人を発掘するのが好きで、皆それぞれ世界中から集まっているオリジナルで個性的なミュージシャン達なんだ。チリ出身の Claudia Acuna (Vocal)、コロンビア出身の Edmar Castaneda (Harp),、ニューヨークのミュージシャン、Jason Lindner (Piano)、Baba Israel (Rapper)、Miya Masaoka (Koto)、and Josh Roseman (Trombone)と挙げればきりがない。これからももっといろんなことを学んでいけるよう、僕をインスパイアしてくれるたくさんの人達と出会い続けたいね。次の目標は2ndアルバムを完成させる事!人々が僕の音楽を楽しんで聴いてくれるといいな。



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Dana Leong (チェロ、トロンボーン奏者、作曲家、プロデューサー)

サンフランシスコ生まれ。幼少の頃より日本人である母の指導のもとで音楽スキルを習得する。マンハッタン・スクール・オブ・ミュージックにてチェロとトロンボーンを学んだ後、Paquito D'Rivera(clarinet)、Dafnis Prieto(drum-set)、Henry Threadgill(saxophone)等をはじめとする、様々なジャンルのトップアーティストと共演し高い評価を受ける。過去にスティーブン・スピルバーグ監督の映画「The Terminal」に出演、その他デザイナーAlexander Hercovitch、Dianne von Furstenberg等ファッションイベントとのコラボレーションも行っている。2006年3月にデビューアルバム「LEAVING NEW YORK」をリリース。ニューヨークを拠点として、アメリカ国内や海外でも精力的に演奏活動を続けている。

http://www.myspace.com/DanaLeonG
http://www.DanaLeonG.com


interview by Chihiro TAKAHASHI
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